介護現場における、利用者さんとのコミュニケーションの基本とコツを解説します。介護士は、利用者さんとのコミュニケーションを頻繁にとる必要がありますが、それらには多くの場合、信頼関係の構築や好みの把握、排泄リズムの把握といった様々な目的があります。目的を意識しながら、コミュニケーションを取るように心がけましょう。コミュニケーションのコツとして、目線の高さを合わせて威圧感を与えないようにすることや、言葉遣いや単語選びを利用者さんの性格などに応じて変えること、適切な距離感を保つことなどが挙げられます。利用者さんとのコミュニケーションスキルは、介護士として必須のスキルとなりますが、苦手だと感じている場合は、一緒に働く職員をよく観察したり、先輩職員にコツを直接聞いたりすると上達が早まるのでおすすめです。利用者さんとの会話ですぐに活用できる、話題の一例もご紹介していますので、是非ご覧ください。
介護現場において、利用者さんとのコミュニケーションは非常に重要です。「ただ話すだけ」に見える場面でも、実は明確な目的を持って会話を進めていることも珍しくありません。コミュニケーションスキルは介護士にとって欠かせないスキルの1つです。
しかし、介護の仕事を始めたばかりの方や実習を控えている方などは、利用者さんと接することに不安や苦手意識を持っている方もいるかもしれません。
そこで本記事では、利用者さんとのコミュニケーションの基本とコツを解説します。実践で使える具体例も合わせて解説しますので、ぜひ参考にしていただければ幸いです。
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介護現場における利用者さんとのコミュニケーションの目的
まずは、介護士が利用者さんとコミュニケーションをとる目的をお伝えします。
特に、認知症の方が多い介護現場では、日常会話や普段の様子から、その方の情報を得る必要もあり、利用者さんとのコミュニケーションは、非常に重要なスキルの1つです。
利用者さんとコミュニケーションをとる場面は様々ありますが、具体的には、次のような目的があります。
- 信頼関係を構築する
- 好みやNGワードを把握する
- 排泄のリズムや不穏になりやすい時間帯などを把握する
など
そしてこれらは全て、その後のケアをスムーズに行うためのものです。
例えば、コミュニケーションによって信頼関係が構築できていれば「○○さんがやってくれるなら…」と入浴や口腔ケアなどをスムーズに行わせてくれることもあります。
また認知症の場合は、利用者さんそれぞれに、不穏のスイッチになってしまう「NGワード」が存在する場合もあるでしょう。
今からケアに入りたいというタイミングでNGワードをうっかり言ってしまい、ケアを中止せざるを得ない…という事態をできるだけ避けるためにも、しっかりとコミュニケーションをとって、利用者さんの情報を把握、共有するように努めましょう。
利用者さんとのコミュニケーションの基本とコツ
それでは、利用者さんとのコミュニケーションの具体的なノウハウについて解説していきます。介護施設に勤務されている場合、1日に複数の利用者さんと関わっているかと思いますが、ADLや認知機能は人それぞれです。各々の状態に合わせた対応を心がけましょう。
初対面は丁寧に
当たり前のことだと思われるかもしれませんが、できていない方も意外といるのではないでしょうか。
信頼関係ができてから、親しみを込めて敬語が砕けるのは問題ありませんが、最初は敬語で接しましょう。また、言葉だけでなく態度も重要です。低姿勢で丁寧に接しましょう。フランクに接しても気に留めない利用者さんとそうでない方がいますので、最初は低姿勢で接するのが無難です。
頑固でプライドの高い利用者さんもいるので、砕け過ぎには要注意。敬意をもって接しましょう。
目線や表情にも気を配る
コミュニケーションをとる相手が車いすやベッドに座っている場合は、自分もしゃがんで目線の高さを合わせましょう。利用者さんを見下ろすような目線にならないように気を配り、威圧感を与えない意識を持って接することを心がけてみてください。
傾聴と共感に重きを置く
会話の目的は、あくまでも相手の話を聞くことです。傾聴と共感を心がけ、心地よく話してもらえるよう意識しましょう。会話のスピードや相づち、質問の仕方などを工夫して、会話を続けやすい環境を整えると良いでしょう。
距離感を合わせる意識を持つ
利用者さんの中にも、積極的に関わってほしいタイプの人、あまり余計なコミュニケーションをとりたくないタイプの人など様々な性格の方がいます。
最初からできるようになるのは難しいですが、好まれる距離感を掴めるようになると利用者さんとのコミュニケーションが非常にラクになり、好かれやすくなります。
利用者さんとのコミュニケーションで使える話題
続いて、利用者さんとのコミュニケーションで使える話題についてお伝えします。
1つの話題から話を広げられると聞き出せる情報も多くなるので、いいコミュニケーションが取れる可能性が高まります。ご紹介するのはあくまで一例ですが、参考にしていただければ幸いです。
情報を全く知らない方を相手にコミュニケーションをとる場合、出身地や好きな食べものの話題から入るのが無難です。例えば、方言のようなイントネーションで話されている方なら、出身地の話から入るなどすると話題が広がりやすいでしょう。
水分提供の場面なら、お茶とコーヒーどっちが好きですか?と聞いて好きな食べ物や好みを把握したり、「娘」「息子」「孫」といった単語が出れば、そこから家族に関する話題や若い時に携わっていた職業の話などに繋げたりといったこともできるでしょう。
慣れてくれば話題はどんどん思いつきますが、不慣れなうちは、どの話題を出すか、何となく決めておくのもおすすめです。
特に、転職初日や実習では、利用者さんの情報を把握していない状態で「とりあえず利用者さんとコミュニケーションをとって」と言われることが多いので、話題のストックを頭に入れておくといいかもしれません。
認知症の方とのコミュニケーションのコツ
介護現場では、認知症の方と関わる機会が非常に多いですが、最初は戸惑う場面もあるかもしれません。そこで、認知症の方と話すときのポイントを3つご紹介します。
筆者も意識しているコミュニケーションのコツは次の3つです。
- 世界観を合わせること
- 分かりやすい言葉を選んで、ハッキリ話すこと
- 否定せずに、話を進めること
世界観を合わせるとは、例えば、すでに旦那さんが亡くなっている利用者さんが旦那さんの話をしても「もういないでしょ?」と否定したり、事実を話したりといった対応をせず、その内容を受け入れる対応のことを指します。
「そうなんですね」と肯定することで、利用者さんは不安や不快な気持ちを感じることなく会話を続けられます。また、認知症によって理解力の低下がみられる場合などでは、言葉選びも重要です。難しい言い回しはなるべく避け、分かりやすい単語を選びましょう。
ぜひ3つのポイントを意識して、コミュニケーションをとってみてください。
利用者さんとのコミュニケーションが苦手な場合の対処法
最後に、利用者さんとのコミュニケーションが苦手な場合の対処法について解説します。利用者さんとのコミュニケーションは介護士として欠かせないことですが、最初は、どう接していいかわからず、戸惑うこともあるでしょう。
そこで、コミュニケーションがうまくとれないと感じている場合の対処法を2つご紹介します。
自分のコミュニケーションのとり方を振り返る
なぜコミュニケーションがうまく取れていないのかを振り返る機会を持つことは非常に有効です。相手の認知機能にあった質問の仕方をしているか?相手のペースに合わせて話ができているか?などを振り返り、確認しましょう。
コミュニケーションが上手いと感じる職員を観察
一緒に働いている人の中で、利用者さんとのコミュニケーションがうまいと感じる人をよく観察するのも1つの方法です。
どんな会話をしている?言葉使いは?などをよく観察してみましょう。また、コミュニケーションのコツなどを直接聞いてみるのもおすすめです。
まとめ
本記事では、介護施設における、利用者さんとのコミュニケーションの方法について解説しました。
利用者さんとのコミュニケーションは、ケアをスムーズに行っていくためにも欠かせない業務の1つです。しかしながら、高齢者との関わり方がわからず、戸惑ってしまう方がいるのも事実でしょう。
本記事でご紹介したコミュニケーションのポイントを抑えつつ、先輩にコツを聞くなど試行錯誤を繰り返しながら、チャレンジしてみてください。回数を重ねれば、段々とコツを掴むスピードも早まりますので、ぜひ何度も挑戦してみましょう。