この記事の要約

ケアマネジャーの現状や給料について解説します。ケアマネジャーは介護保険制度の要であり、役割は多岐にわたります。一方、受験制度の厳格化によりケアマネジャーの受験者数は激減し、深刻な人手不足が囁かれているのも事実です。給与面においては介護職員との差が縮まりつつあり、ケアマネジャーの処遇改善について関心が高まっています。今回は、ケアマネジャーの給料について様々な視点から分析した上で、具体的な年収アップの方法や将来の展望についてもご紹介します。

 
ケアマネジャーの資格を取得したのに、思ったほど給料がアップしない。
 
このまま将来も給料が上がらないのでは?

という悩みをお持ちの人もいるかもしれません。

ケアマネジャー資格は介護業界の中で最上位であり、役割もケアプランの作成やサービス調整など多岐に亘り、介護保険の要と言えます。しかし、ケアマネジャーの処遇改善は進んでいないのが現状です。

そこで今回はケアマネジャーの給料について徹底的に分析・解説していきます。具体的には、

  • ケアマネジャーの人口や有効求人倍率について
  • 職種や施設形態、年齢別にケアマネジャーの給料を比較
  • ケアマネジャーの給料をアップさせる方法
  • ケアマネジャーの将来性について

の順にご紹介します。

深刻な人員不足!ケアマネジャーの現状について

少子高齢化が加速し、ますます介護業界の人手不足が深刻化していると言われています。介護保険制度の中で中心的な役割を持つ介護支援専門員(以下、ケアマネジャー)も例外ではありません。

ここではケアマネジャーの人口や求人倍率、最近の受験者数などについて紹介します。

ケアマネジャーの人口と有効求人倍率についての概要

2021年までのケアマネジャー合格者累計は72万8887人です。多く感じるかもしれませんが、第1回ケアマネ試験が実施されたのは1998年です。

そのため、今では稼働していない人も含まれているでしょう。ケアマネジャーは転職市場において、どの程度ニーズがあるのでしょうか。有効求人倍率を見てみましょう。

有効求人倍率とは求職者1人に対して、何件の求人があるかを示す数値です。令和元年のケアマネジャー有効求人倍率は3.66倍でした。

全産業の有効求人倍率1.55倍と比較すると、ケアマネジャーは全産業よりも約2.3倍ニーズが高いと言えます。つまりケアマネジャー求人は、求職者に有利な「売り手市場」です。

第24回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000187425_00008.html

ケアマネジャー受験者数が激減!2019年度はピーク時の2割強に

ケアマネジャー資格試験の受験者数が、ピーク時に比べて激減しています。

理由のひとつは、受験資格の厳格化です。2018年まではヘルパー2級を所持していれば、5年の勤務経験でケアマネジャー試験を受験できました。

ところが2019年、ヘルパー2級所持者の受験資格が除外され、代わりに介護福祉士取得後5年の勤務経験が必要となりました。

つまり介護職の経験がない人がケアマネジャーを受験するためには、それまで最短5年で受験できていたものが、少なくとも8年の現場経験が必要になったのです。

以上の受験資格厳格化の影響もあり、2019年の受験者数は4万9332人と過去最少の人数でした。ピークである2014年の17万4974人に比較すると約2割にまで落ち込んだのです。

ちなみに2021年の受験者数は5万4290人とやや上昇しています。

第24回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000187425_00008.html

ケアマネジャーの給料はどこから出ている?

ケアマネジャーの給料は、介護報酬から支払われます。

計算式は以下の通りです。

ケアマネジャーの給料

ケアマネジャーの給料=担当件数×居宅介護支援費+加算など

居宅介護支援費は、要介護1・2は1076単位、要介護3・4・5は1398単位です。担当件数の上限はサービスの質を担保するため、40件に設定されています。

原則40件以上になると報酬が減算されますが、ICTの活用や事務職員の配置などの要件を満たすと45件まで引き上げられます。

ケアマネジャーの平均給与はどのくらい?条件別で徹底比較

ここではケアマネジャーの平均給与について、条件別(職種・施設形態・性別・年齢別)に徹底比較します。それでは順に見ていきましょう。

職種別にみる介護職の平均給与

 まずは職種別に平均給与を見ていきます。以下の表は職種別に平均給与をまとめたものです。

ケアマネジャーの平均給与は、看護職員や理学療法士などに次いで高水準となっています。前年比は、プラス10,390円です。

一方、処遇改善が進んでいる介護職員は前年比プラス15,730円となりケアマネジャーとの給与差が縮まってきています。

  2020年平均給与(前年比) 2019年平均給与
介護支援専門員(ケアマネ) 357,850円(+10,390円) 347,460円
看護職員 379,610円(+6,670円) 372,940円
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・機能訓練指導員 358,560円(+9,370円) 349,190円
生活相談員・支援相談員 343,310円(+10,330円) 332,980円
介護職員 315,850円(+15,730円) 300,120円

厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/20/dl/r02kekka.pdf#page=137

施設形態別にみるケアマネジャーの平均給与 

ここでは施設形態別に、ケアマネジャーの平均給与を見ていきましょう。ケアマネジャーの働き方には「居宅系」と「施設系」の2種類があります。

以下の表の通り、施設系ケアマネジャーの平均給与は在宅系より高い傾向があります。最も高いのは特別養護老人ホームで、次に介護老人保健施設が続きます。

理由は、施設系ケアマネジャーは現場職員を兼務することが多いからです。夜勤手当や処遇改善を得られるので、現場に入る機会がない在宅系ケアマネジャーよりも平均給与は高くなっていると考えられます。

施設の形態 ケアマネジャーの平均給与
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) 411,830円
介護老人保健施設 395,950円
訪問介護事業所 340,800円
通所介護事業所 338,380円
小規模多機能型居宅介護事業所 355,090円

厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/20/dl/r02kekka.pdf#page=175

年齢や性別でみるケアマネジャーの平均給与

ここでは年齢や性別による給料のちがいを紹介していきます。

以下の表の通り、ケアマネジャー平均給与のピークは男女ともに40代で、その後は緩やかに下降していきます。

また男性ケアマネジャーの給与が高い理由は、管理職やリーダー職に就いている例が多いからと考えられます。

次の表は月給制で常勤の介護職員の平均給与額(処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅴ)を取得している事業所)です。

年齢 男性 女性
29歳以下 295,580円 287,430円
30〜39歳 342,110円 304,650円
40〜49歳 357,260円 315,000円
50〜59歳 333,160円 313,530円
60歳以上 289,800円 286,080円

次の表は月給制で常勤の介護職員の平均給与額(特定処遇改善加算(Ⅰ)、(Ⅱ)を取得している事業所)です。

年齢 男性 女性
29歳以下 303,010円 291,730円
30〜39歳 351,330円 315,980円
40〜49歳 366,360円 324,290円
50〜59歳 341,300円 324,080円
60歳以上 297,380円 295,200円

厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果」https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/20/dl/r02kekka.pdf#page=175

保有資格別にみる平均給与

保有資格別でみた介護職の平均給与は以下のとおりです。

無資格で働く場合とケアマネジャーの給与差がもっとも大きく、約82,000円の開きがあります。

保有資格 平均給与額(月額)
介護支援専門員(ケアマネジャー) 357,850円
介護福祉士 329,250円
実務者研修 303,230円
介護職員初任者研修 301,210円
資格なし 275,920円

厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/20/dl/r02gaiyou.pdf

ケアマネジャーの給料は安いってホント?

「ケアマネジャーの給与は安い」と言われていますが、本当でしょうか?

結論は「一概には断定できない。考え方による」です。

勤続10年以上の介護福祉士の平均給与(36万6900円)が、ケアマネジャー(33万660円)を逆転したことが話題になりました。

しかし、これは同一調査の結果ではありません。しかも調査対象のケアマネジャーの平均勤務年数は8. 8年でした。

介護施設では勤務年数が基本給に大きく影響しますので、必ずしも正しい調査結果とは言えないでしょう。

言うまでもなく、ケアマネジャーは介護保険制度の要です。施設長などを兼任するケースも多く、これから処遇改善が進む可能性もあります。

「ケアマネジャーの給料が安い」というのは、全てのケースに当てはまるとは言えないでしょう。

居宅介護支援における業務負担等に関する調査研究事業 294ページhttps://www.mri.co.jp/knowledge/pjt_related/roujinhoken/dia6ou000000qwp6-att/R2_022_2_report.pdf

厚生労働省ホームページhttps://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/20/index.html

ケアマネジャーが年収をアップさせる5つの方法とは

ここではケアマネジャーが年収をアップさせる方法を5つ紹介します。順に見ていきましょう。

転職する

長年施設に勤務していても、「今ひとつ正当に評価してもらえない」と感じている人もいるかもしれません。また、手当が少なかったり昇給幅が小さかったりして悩んでいる場合は、思い切って条件の良い施設へ転職するのも有効な手段です。

在宅系の施設に勤務している人は、夜勤のある施設系に転職すると大幅な給料アップが見込める場合もあります。自分の持つ経験やスキルを正しく評価してくれる施設を探すことは、正当であり有効な給料アップの手段です。

資格を取得する

資格を取得し、更なるキャリアアップを目指す方法です。

上位資格である主任ケアマネジャーを取得すれば、資格手当がアップする事例も多くあります。主任ケアマネジャーは、ケアマネジャーとしてのキャリアが5年以上かつ主任介護支援専門員研修を修了すると取得が可能です。

主任ケアマネになれば後輩の指導なども役割となり、管理職に抜擢される可能性もグッと高くなります。

資格取得は、スキルが向上するだけでなく給料アップも見込めます。

役職に就く

施設長や管理職に就いて、役職手当をもらうことで給料アップを目指します。

ケアマネジャーが施設長を兼任するケースは多いので、チャレンジする価値はあるでしょう。施設の運営に携わっていきたい人には、一石二鳥の方法です。

現事業所で勤続する

現在の職場に長く勤務することで、給料アップを目指す方法です。

介護施設に限らず日本企業では、長く勤務することで基本給がアップするケースが多くあります。また正職員の場合は、基本給に応じて賞与が支給されるので年収ベースでの上積みに反映するでしょう。

独立する

新規事業として法人を設立し、独立開業する方法です。

法人職員として勤務していると、個人の成績が良くても組織全体の経営状態によって給料は変動します。

その点、独立型ケアマネジャーなら全て自分次第です。自宅を事務所にするなど、工夫次第で収入アップも可能です。

担当件数の上限はありますが、条件次第で緩和されていることも追い風です。

ただし収入は担当件数に左右されます。利用者の急な入院などで収入が変化するので、職員時代よりも安定感は低いでしょう。

ケアマネジャーの将来性は?今後の処遇改善の見通しについて

今後のケアマネジャーの処遇改善について考えてみましょう。

現在、ケアマネジャーは介護職員処遇改善加算の対象外です。介護職員の処遇改善が進んでいることから、勤務年数によってはケアマネジャーの給与を上回ることさえあります。

しかし2019年介護職員等特定処遇改善加算で、施設ケアマネジャーが対象となりました。

在宅系ケアマネジャーはまだ対象外ですが、少しづつ処遇改善が進んでいると言えます。

加えて2021年5月12日、日本介護支援専門協会はケアマネの更なる処遇について改善の意向を表明しています。ケアマネジャーの年収500万円を目標に掲げたのです。

今後さらにケアマネジャーの処遇改善が進んでいく可能性もあります。

まとめ

ケアマネジャーが人手不足であることや、給料アップの方法について解説しました。

介護保険制度の要であるケアマネジャーの給料は、現状満足できるものではありません。処遇改善が進んでいる介護職員と比較するとなおさらです。

2019年の介護職員等特定処遇改善加算では、施設ケアマネジャーも支給対象になり、状況は好転しつつあります。今後も、ケアマネジャーの処遇が改善していくことを願うばかりです。

しかし制度に頼るばかりでは、望むような給料アップは叶わないでしょう。資格を取得したり、役職に就くなどの努力が必要です。

さらに即効性のある手段は、手厚い賞与や福利厚生、入社お祝い金制度を設けている施設への転職を検討することです。少しでも気になる方は、自身の力を正当に評価してくれる施設と面談し、話を聞いてみることをおすすめします。

この記事を参考にして、あなたが満足してケアマネジャーとして活躍できる方法を見つけられれば幸いです。

ABOUT ME
朝水 裕一/現役ケアマネライター
介護業務に従事して11年目の現役ケアマネジャー。 介護福祉士、認知症ケア専門士、第1種衛生管理者の資格を保有。 大型デイ、認知症対応型デイ、グループホームでの管理者経験あり。 管理者時代は「チームワーク重視の熱血型」。「2年間退職者ゼロ」を達成。 元塾講師の経験を活かし、介護職員初任者研修で講師を務めることも。 「分かりやすく人に伝える」をモットーにWebライターとして活動中。