この記事の要約

入浴の効果や目的は、清潔保持だけではありません。褥瘡を予防したり、リラックス効果を高めたりといったことも期待できます。また、入浴は全身の状態を把握する最適な機会でもあるため、全身をしっかりと観察し、あざの有無や皮膚トラブルの有無を把握しましょう。介護施設の入浴設備は、大きく分けて3つの種類があります。利用者さんの状態に合わせて使い分けましょう。また、本記事で紹介する入浴手順は、あくまで基本です。こちらも利用者さんの状態や施設のタイムスケジュールによって変わるため、ご自身の職場環境に合わせてお役立ていただければ幸いです。

これから介護施設で働く予定のある方や、ご家族が介護施設で過ごされる機会がある方などは、入浴の介助について、どのような手順で行っているのかと気になることもあるでしょう。入浴は身体を清潔に保つだけでなく、様々な効果をもたらすものですが、介助に入ることを拒否されることも珍しくないケアの1つです。

本記事では、介護施設での入浴介助の様子を解説し、ケアのポイントなども併せて記載します。

入浴介助の手順や観察のポイントなどは、介護福祉士の視点も多く記載していますので、本記事を参考にケアの様子を把握したり、日頃のケアに役立てたりしていただけたら幸いです。

入浴の目的・効果とは?

まずは、入浴の目的と効果についてです。入浴は、身体を清潔に保つためにするものというイメージを持たれる方も多いかと思います。もちろん、清潔保持の側面もあり、その認識も正解です。ただ、入浴の目的はそれだけではありません。

具体的には、入浴には次のような効果が期待できます。

  • 身体を清潔に保つ
  • 床ずれや感染症を防ぐ
  • 介助者側から全身の状態を観察できる機会となる
  • 爽快感を得られ、リラックスできる
  • 介助をする側とされる側のコミュニケーションの場になる

など

また、身体が温まり血流がよくなることで浮腫みの改善効果なども期待できます。

介護士の視点で申し上げると、入浴は全身の観察のために非常に重要な機会です。そのため、スムーズに入浴してもらうための工夫も欠かせません。裸を見られることへの抵抗感や、体力面で億劫に感じてしまうことへの配慮をしながら、ケアに繋げることが必要です。

入浴の種類

続いて、入浴の種類を確認しましょう。介護施設の場合、一般家庭にあるようなお風呂以外に、自分で身体を動かせない方や座位保持が難しい方向けの設備があります。大きく分けて3種類です。それぞれ簡単にご紹介します。

一般浴

一般家庭にある浴槽と同様の設備のことを指します。いわゆる普通のお風呂です。個浴とも呼ばれ、1人で入浴できる方や手すりがあれば、一般的な浴槽で入浴ができる方向けです。

リフト浴

こちらは座位が保てる方が対象です。車いすなどを使用していても、ご自身で身体を安定させることができる方などが使用する設備となっています。座っていることはでき、浴槽を跨ぐのは難しいという方に最適です。

機械浴

特浴とも呼ばれます。椅子に座ったままもしくは、ストレッチャーに寝たままで入浴できる設備です。寝たきりや自分で身体を動かすことが難しい方向けです。浴室内での移乗が最小限に抑えられ、安全に入浴できます。

入浴介助の際に確認・観察すべきこと

続いて入浴介助の際に介護士が確認すべきポイントについて解説をしていきます。

先ほども少しお伝えしましたが、入浴は介護士にとって、全身の状態を把握するために欠かせない機会となります。

入浴の介助をしながら、体調と皮膚の状態を必ず確認しましょう。

体調の確認は、本人に直接体調を尋ねるほか、血圧や体温の測定などを実施します。

皮膚トラブルの有無に関しては、身体に不自然なアザが無いか、床ずれ(褥瘡)や水虫が無いかなどを確認しましょう。

なお、体調の確認は入浴の前後、皮膚の状態の確認は、入浴介助の最中にそれぞれ行い、必要に応じて看護師などの医療職に確認や指示を求めることもあります。介護士は、疾患の重症度や処置の必要性について判断が可能な職種ではありません。経験を重ねると判断できるようになってくる場合もありますが、最終判断は必ず医療職に仰ぎましょう。

入浴介助の手順

それでは、入浴の手順について、入浴前、入浴中、入浴後にわけて解説をしていきます。

入浴前

まずは着替えやタオルを準備して、お湯を張り、浴槽の準備を行います。その間にタオル類や着替えを揃えるなどします。保湿剤や軟膏・爪切りなども必要であれば準備しておきましょう。裸の状態で利用者さんを待たせることが無いように準備はしっかりしておくことが大切です。また、ヒートショックの予防のため、冬場は特に、脱衣所の温度を調整することも非常に重要ですので忘れず行いましょう。

入浴中

さて、準備が整ったら、いよいよ入浴開始です。入浴の手順は次のとおりに進むことが多いですが、利用者さんの状態に合わせて多少変化する場合もあります。

  1. 利用者さんの肌が触れる箇所にはお湯をかけて、温めておく。
  2. お湯の温度を自分で確認、その後利用者さんの足元などにかけて、温度を確認してもらう。問題が無ければ、心臓から遠い位置からかける。
  3. 利用者さん本人の希望などがない場合は頭→顔→上半身→下半身と上から洗っていき、流しのこしがないようにする。
  4. 全身を洗い終えたら、湯船に浸かる。時間は5分程度が理想的。長めの入浴を利用者さん本人が希望する場合は十分に観察しながら行うのが基本。

浴室の床や椅子など、利用者さんの地肌が触れる場所は、あらかじめお湯をかけるなどして温めておくとより快適に入浴してもらうことができるので、おすすめです。

またお湯をかけるのは、足先などなるべく心臓から遠い位置からにしましょう。心臓に疾患がある利用者さんもいるため、なるべく心臓に負担をかけない手順で進めるように心がけてみてください。

湯船は、40度程度のお湯に5分くらい浸かるのが理想的です。高齢者は、暑さや寒さを感じにくくなっていることもあるため、介護士が時間をしっかりと把握し、適宜声かけを行う必要があります。

入浴後

上記の手順で入浴が終了したら、次の手順を行い、入浴介助終了です。

  1. 身体の水分をしっかりと拭きとり、必要に応じて軟膏や保湿剤の塗布・傷の処置などを行い、その後洋服を着る。
  2. 髪を乾かしたら入浴手順は終了。

入浴が終了し、利用者さんをフロアや居室に送った後は、リラックスして過ごしてもらいましょう。入浴は体力を使うので、水分補給を促しながら、体調に異変が無いか、しばらく観察する必要があります。フロアの業務を担当している職員に入浴中の様子を引き継ぎ、観察を依頼しましょう。

入浴が終了したら、浴室の掃除と洗濯物や(オムツなどの)ゴミの片付けをします。さらに、入浴を行ったことやその時の様子などを記録に残し、入浴介助は全て終了です。

入浴介助に適した服装

特に決まった服装があるわけではありませんが、Tシャツとジャージの短パンなど動きやすい服装で行う人が多いでしょう。入浴用のエプロンを着用する場合もありますが、通気性がなく非常に暑いため、夏場は付けない職員が大半かもしれません。

また、衛生上の問題でディスポグローブを着用するよう推奨されることがありますが、介護施設では素手で入浴介助を行う職員が非常に多いです。感染症などがない場合は、自己判断に任せている場合がほとんどでしょう。

入浴介助の注意点

入浴介助の注意点は様々ありますが、筆者が普段から意識しているのは、次の4つです。

  • 室温・湯温に気を配る。
  • 食事の直後や空腹時はなるべく避ける。
  • お湯をかける時はできるだけ足元から。
  • 水分補給を忘れずに行う。

いずれも、入浴の手順でご紹介した中にあるほんの小さなことですが、どれも事故や急変を防ぐためのものであり、根拠のある手順です。

業務に追われていると、疎かになってしまうこともあるかもしれませんが、1つ1つの手順を確認しながら進めましょう。

入浴を拒否された際の声かけのポイント

最後に、入浴介助を拒否された時の対応について簡単にお伝えします。入浴は、様々なケアの中でも、拒否されることが珍しくない介助の1つです。

介護施設の場合、時間によってやらなければいけない業務が決まっており、業務に追われているため、焦ったりイライラしたりしてしまうこともあるでしょう。しかし、拒否が出てしまった際、無理矢理ケアに入ろうとするのは、多くの場合逆効果です。

さらに強い拒否につながることもあるため、いったん距離をおき、時間を空けてから再度試みたり、利用者さんの不穏のスイッチとなる言葉を見極め、その言葉を使わずに誘導したりといった工夫をしてみましょう。

また、なぜ拒否に繋がっているのか考えることも大切です。拒否の理由によって適切な対応が変わるため、「なぜ?」と考える習慣を身につけるとよいでしょう。

拒否のよくある理由は次のとおりです。

  • 体調が優れないことを上手く伝えられず、入浴拒否に繋がる
  • 裸をみられることへの抵抗感
  • 「入浴」が理解できない、何をされるか理解できず拒否に繋がる
  • 面倒くさい

など

拒否の理由は千差万別ですが、特に多いのがこれらの理由です。是非ケアの参考にしてみてください。

まとめ

入浴は、清潔保持の役割だけでなく、褥瘡予防やリラックス効果も期待できる大切なケアです。本記事でご紹介した入浴の手順はあくまで基本ですが、利用者さんの状況によって臨機応変に対応することを前提としたうえで、参考にしていただければ幸いです。

ABOUT ME
椿 るい/現役介護福祉士ライター
介護業務に従事して9年目の介護福祉士。 介護現場でのリアルを伝えるため、Webライターとしても活動中。 特養や精神科での勤務経験を活かし、事実に基づいた「生の声」をお伝えします。また、ユニットリーダーなどの役職の経験や常勤・派遣・夜勤専従派遣といった複数の働き方の経験もあるため、介護士としての働き方や給与の問題は特に経験と知識が豊富です。