この記事の要約

介護業界は慢性的な人手不足の状態にあり、管理職においてはその状況が顕著です。その背景には、人材育成制度が整っていないなどの問題があり、介護業界経験者でも支配人などの管理職につきたいと考えない人もいます。このような状況のため、他業界でマネジメント経験や運営・経営に携わった経験がある方は、非常に重宝されるでしょう。管理職であれば介護経験や資格の有無を問われないことも多く、年収も高水準です。マネジメントや人材育成、店舗や施設の運営など支配人としての経験がある場合は、非常に有利に転職を進めることができます。ぜひ、介護業界へのキャリアチェンジを検討してみてはいかがでしょうか。

ホテル業界や飲食業界など、コロナ禍で打撃を受けた業界は非常に多く、失職したり、大幅な減給を経験したり…といった方は少なくないでしょう。そうした方の中には、支配人として現場を統括し、豊富な経験をお持ちの方も多いかと思います。

本記事では、上記のような「他業界ですでに支配人としての経験をお持ちの方」へ向けて、高齢者介護施設での支配人の業務について解説を行います。

介護業界での支配人の求人は、業界未経験でも応募可能な場合も多く、キャリアチェンジにも最適です。

本記事を読み、介護業界の支配人業務について、メリットや概要を把握し、少しでも興味を持っていただけたら幸いです。

介護業界とは?

まずは、介護業界の動向から簡単に解説します。

現在の日本は超高齢社会であり、高齢化率は今後も上がっていくと予想されています。高齢化が進むということは、介護が必要になる人が多くなるということ。つまり需要は今後も安定してある業界だと断言できます。

しかし、この大きな需要に、業界の体制が追いついておらず、管理職含め、業界全体で人手不足が慢性化している現状です。通常、管理職や管理職候補であれば、業界経験者から採用するものですが、このような現状もあり、業界未経験でも管理職を目指せる求人が多く存在しています。他業界で管理職経験があれば、有利に転職活動を進められるチャンスが非常に多い業界です。

介護施設に管理職(支配人や施設長など)が求められている背景

介護施設の職員は、管理職を目指す意欲がない職員も多くいます。その理由として、現場職員には夜勤があり、夜勤手当を稼ぐことで管理職に上がるよりも高い給与が維持できるといった給与の体系に問題がある場合などが考えられます。

その結果、現場の介護職はそれなりに増えても、管理職が少なく、組織として成長が遅くなってしまうといった悪循環が生まれてしまうのです。そのうえ、介護施設では管理職としての教育を受けないまま、「他に人がいないから」という理由で無理やり管理職を任されるケースも珍しくありません。こうした背景により、介護現場を経験している多くの職員は、管理職になることに消極的であることが多いのです。

とはいえ、管理職に上がっても給与が増えづらい施設ばかりではありません。異業種の管理職経験者を歓迎している企業や法人は、しっかりと昇給する給与体系になっている場合が多いため、その点はご安心ください。異業種であっても、マネジメントなど管理職ならではの経験をお持ちの方は、非常に貴重な存在であり、重宝されることは間違いないでしょう。

施設で活かせる異業種のスキル

介護施設の支配人や施設長は、施設全体を把握することが求められます。施設運営が滞りなく行えているか、人材や財務など様々な観点から客観的にみる視野の広さが必要です。現場との連携をスムーズに行うコミュニケーション能力やマネジメント経験があれば、その能力と経験を大いに活かせるでしょう。

また介護施設と聞くと特別な資格がなければ働けないとイメージされる方も多いかもしれません。

しかし実際には、介護施設の支配人・施設長は「資格不要」の場合も多いのです。そのため、異業種から転職し、支配人・施設長候補として介護業界に再就職する方も珍しくありません。

介護施設で支配人になる4つのメリット

続いて、介護施設の支配人になるメリットについて解説します。

今回ご紹介するメリットは次の4つです。

  • 異業種でのマネジメント経験が活かせる
  • 法制度や経営の知識などさまざまな知識をバランスよく身につけられる
  • 介護業界未経験から目指せる
  • 業界トップクラスの給与水準

異業種でのマネジメント経験が活かせる

介護業界での経験がない方でも、複数人の部下を抱えてマネジメント業務を担当していた経験がある場合は、その経験を十分に活かせます。

介護現場を経験して管理職につく人もいますが、人材育成の制度が整っていない組織も多いため、管理職としての視点が欠けたまま、そのポジションに就いてしまっている場合も少なくありません。そのため、他業種であっても、マネジメントの経験や人材育成の経験がある場合は非常に重宝され、これまでの経験を存分に発揮できるでしょう。

法制度や経営の知識などさまざまな知識をバランスよく身につけられる

支配人は施設の運営や経営に関することに携わる機会が非常に多いポジションです。加えて、介護保険や介護関連の法令、行政との関わり方などの知識も必要でしょう。

このように介護業界ならではの知識も必要になりますが、運営・経営に関するノウハウを現場で学ぶことができるのは支配人など管理職ポジションならではのメリットです。

介護業界未経験から目指せる

支配人は、介護現場に精通するより、むしろ施設運営に力を発揮するポジションです。そのため、介護業界での経験は問われないことも多くあります。もちろん、最低限の知識や現場の雰囲気は知っておくべきですが、採用時に介護の知識を深く求められることは多くないでしょう。特に、株式会社が運営する有料老人ホームなどはその傾向が強く、業界未経験での転職を目指す場合は、ねらい目かもしれません。

業界トップクラスの給与水準

支配人などの管理職候補で採用される場合、年収700万円程度を目指せる求人もあります。介護業界は、その仕組み上、高給はあまり望めない場合が多いですが、管理職となれば年収は平均で500万円台。介護業界においては非常に高い水準です。

介護施設の給与形態

介護業界の給与形態は少し特殊ですので、簡単にご説明します。

管理職となると、夜勤がなかったり、資格がなくても雇用されたりと一般企業に近い給与形態になる場合も多いです。一方で、介護現場の職員の給与は少し異なります。基本給はあまり高めに設定されていないことが多く、20万円未満である場合も少なくありません。ただし、20万円未満の基本給にくわえて、各種手当がつきます。手当とは、夜勤手当・資格手当・処遇改善手当、役職手当などです。それらが積み重なって、25万円以上の金額になる場合が多いでしょう。

介護現場で働く職員の給与は夜勤回数などによって非常に差があるため、統計上の平均よりも多く稼ぐ人とそうでない人の差が非常に大きくなる傾向があります。

業界未経験での転職の場合、介護現場での業務を任されることはあまりありませんが、知識として把握しておいていただければ幸いです。

介護施設の福利厚生

福利厚生についてのご紹介です。一般的なものから、介護福祉業界特有のものまで様々あります。もちろん法人や企業によって異なりますが、ぜひ参考にしてください。

  • 200円~300円程度で社食が食べられる
  • マスク無料
  • インフルエンザワクチン無料
  • 社会保険
  • 通勤手当
  • 退職金制度
  • 産休・育休暇制度
  • 社内託児所
  • 資格取得支援制度
  • 特別休暇制度
  • 社宅、家賃補助
  • 腰痛対策
  • 医薬品の割引販売
  • 従業員持株会制度

など

マスクやワクチンが無料で提供されるのは、介護業界ならではの福利厚生の1つでしょう。ほかにも、企業や法人特有の福利厚生がありますので、採用面接の際に尋ねてみても良いかもしれません。

介護施設支配人の求人探しの注意点

最後に、介護施設の支配人の求人を探す時の注意点をお伝えします。

介護業界未経験でも、資格がなくても応募でき、異業種での支配人としての経験が活かせる仕事ではありますが、1点だけ、注意すべきポイントがあります。

それは、管理職であっても介護現場の仕事を任される場合があるという点です。全ての求人がそのような条件で管理職を募集しているわけではありませんが、管理職の求人の中には、現場の介護職と兼務の場合もあるということを把握しておきましょう。

その場合は夜勤が発生する場合もあり、管理職業務以外に覚えなくてはいけないことも多くなります。また、管理職の適性と介護現場での適性は異なりますので、「マネジメント経験を活かしたり、経営を学んだりする目的で転職したのに、なぜか介護士と働いている…」という状況になってしまわないためにも、労働条件の確認は必ず行っておくことをおすすめします。

介護施設支配人の求人はライバル不在の穴場です

介護業界は、しっかりとした人材育成の環境が整っていない施設も珍しくありません。そのため、異業種でのマネジメント経験や管理職があるのは非常に強力な強みとなるでしょう。

また、管理職候補で入社すれば、給与水準も高く、あまり給与が高くないとされる介護業界であっても、年収500万円以上を目指すのは難しくないはずです。

このような観点から、他の業界で管理職経験があり、業界を変えて転職を検討している方には、介護業界へチャレンジすることは非常におすすめできます。

業界についての知識がないことに不安を感じる方もいるかもしれませんが、介護に関する知識については、働きながら身につければ問題ありません。そもそも介護業界は、異業種で働いたのちに、無資格・未経験で入社する人も多い業界です。介護に関する知識は、多くの人が実務を通して学んでいることが多いため、業界に入ってから学ぶ姿勢があれば問題ありません。

他業界での支配人の経験を活かして活躍できる、介護業界への転職を検討してみてはいかがでしょうか?

まとめ

介護施設の支配人は、業界未経験から目指すことができ、給与水準も高めです。一部の求人では、介護現場の業務と兼務の場合もあるため、その点については注意が必要でしょう。とはいえ、その点のみ注意していれば、今までの経験を存分に活かしながら、キャリアチェンジが可能です。

ぜひ、介護業界への転職を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。

ABOUT ME
椿 るい/現役介護福祉士ライター
介護業務に従事して9年目の介護福祉士。 介護現場でのリアルを伝えるため、Webライターとしても活動中。 特養や精神科での勤務経験を活かし、事実に基づいた「生の声」をお伝えします。また、ユニットリーダーなどの役職の経験や常勤・派遣・夜勤専従派遣といった複数の働き方の経験もあるため、介護士としての働き方や給与の問題は特に経験と知識が豊富です。