この記事の要約

介護福祉士は介護の資格の中で唯一の国家資格です。高校・専門学校・大学の介護福祉士養成課程を修了するか、実務経験を3年積み、実務者研修を修了することで、国家試験の受験資格が得られます。学歴がなくても、未経験から介護業務に従事し、2つの条件をクリアすることで受験資格が得られるため、手に職を付けたいと考える方にもおすすめです。介護福祉士は国家資格ですが、試験の難易度はそれほど高くなく、働きながらでも十分に合格が目指せます。また介護福祉士取得後は、ケアマネージャーへキャリアチェンジすることも可能ですので、ライフステージの変化などに合わせて検討してみると良いでしょう。

介護福祉士に興味を持ち、取得を検討されている段階で、「介護福祉士には、どうやってなるのだろう?」「学歴はないけど、大丈夫?」と疑問や不安を感じている方もいるのではないでしょうか?

介護福祉士になる方法はいくつか種類があり、ルートによって年数や必要な学歴が異なります。本記事では、介護福祉士を取得する流れを始めとして、介護福祉士を目指すための勉強方法や介護福祉士のキャリアパスについて解説します。

本記事を今後の進路や転職の検討材料としてお役立ていただければ幸いです。

介護福祉士とは?

介護福祉士は、介護の資格の中で唯一の国家資格です。介護福祉士養成課程を修了するか、実務経験を3年積み、実務者研修を修了することで、国家試験の受験資格が得られます。そして、国家試験に合格し、登録を行うことで、介護福祉士として業務に従事できる仕組みです。

介護福祉士の仕事は、高齢者や障がい者など、要介護者の生活全般を支えることであり、活躍の場は病院・高齢者施設・障がい者施設など多岐にわたります。

介護福祉士の資格がなくても、介護業務に従事することは可能ですが、給与額や役職の就きやすさなどでは介護福祉士の方が有利です。さらに、国家資格を持っていると、利用者家族からの信頼を得やすいというメリットもあり、介護に長く従事する方の多くが取得を目指す資格であると言えるでしょう。

介護福祉士の受験資格は?

介護福祉士の取得を目指せる方法は、全部で4つあります。それぞれのルートで受験資格が異なるため、ご自身が目指すルートでの要件を確認しましょう。

以下に、ルート別の介護福祉士国家試験受験資格をまとめます。

養成施設に通って介護福祉士を目指す場合

養成施設に2年以上通うことで国家試験の受験資格を得られるルートです。養成施設にて、1850時間程度の授業を受ける必要があります。ただし、学歴によっては最短1年で介護福祉士を目指すことも可能ですので、ご自身の学歴と照らし合わせて確認してみると良いでしょう。

福祉系高校に通って介護福祉士を目指す場合

福祉系高校に2009年度以降に入学し、指定の科目・単位を修了、卒業すると受験資格が得られるルートです。年齢的には全てのルートの中で、1番早く国家試験の受験資格を得られます。「介護士として仕事がしたい」という意思が、早い段階で固まっている場合におすすめのルートです。

実務経験を積んで介護福祉士を目指す場合

介護福祉士は、学校に通わなくても受験資格を得ることができます。その場合は、3年以上の実務経験を積み、実務者研修を修了する必要があります。実務者研修とは、今は廃止されたヘルパー1級に相当する資格とも言われ、介護の基礎知識に加えて、実践的な内容が学べる民間資格の1つです。実務経験ルートで介護福祉士を目指すなら、修了が必須であり、受講費用は10万円以上かかる場合が多いです。しかしながら、実務者研修の受講費用を勤務先の会社で負担してくれる場合も珍しくないため、介護福祉士の取得を考えている場合は、資格取得支援制度の有無を事前に確認すると良いでしょう。

EPAルート

インドネシア人・ベトナム人など外国人が対象です。日本の介護福祉士資格を取得することを目的とした研修を受けながら働く方が目指すルートになります。

【無資格から目指せる!】介護福祉士の資格取得ルート

上記でご紹介した4つのルートをわかりやすく図にまとめました。

福祉系高校ルートは1番若くして、国家資格の取得が目指せるため、早く介護現場で活躍したいと考えている若者におすすめのルートです。一方、養成施設は専門学校や大学の福祉系学科のことを指します。高校卒業後、現役で受験する方法ももちろんありますが、社会人入試で入学を目指す方もいるでしょう。介護業務は、資格が無くても従事することができますが、介護技術だけでなく、理論や歴史・法律などをしっかりと学びたい方向けと言えます。

実務経験ルートは経験がなくても、資格がなくてもスタートできるため、働きながら国家資格の取得を目指したい方が選択するルートです。介護福祉士取得まで3年の時間は要しますが、学校に通う必要がないため、費用を抑えながら介護福祉士を目指したい方にもおすすめです。

介護福祉士になるために必要な金額は?

介護福祉士になるために必要な学費は、どのルートで介護福祉士の取得を目指すかにより、大きく異なります。以下の表にルート別の学費をまとめましたので、参考にしてください。

ルート 学費 年数
養成施設ルート(専門学校) 約2,160,000円 2年制
養成施設ルート(福祉系私立大学) 約4,600,000円 4年制
福祉系高校ルート(都立高校) 約362,050円 3年制

(※首都圏の学校をランダムに3校選出し平均値を記載)

なお、上記の表は首都圏の学校の学費を参考に記載していますので、地方の学校に進学される場合は、多少下がることも予想されます。金額は目安とお考えいただき、詳しくはご自身がお住いの地域で検索してみることをおすすめします。

そのほか、介護福祉士国家試験の受験料18,380円、登録費用として登録免許税9,000円、登録手数料3,320円がそれぞれ必要です。

介護福祉士になる時の手順と注意点

介護福祉士は、試験に受かったら即時名乗れるものではありません。介護福祉士として仕事をするには、以下の手順をすべてクリアする必要があります。順番に見ていきましょう。

介護福祉士になる時の手順
  1. 国家試験受験申し込み
  2. 国家試験受験
  3. 国家試験合格
  4. 登録
  5. 合格証が手元に届く

手順5まで進んで、初めて介護福祉士として仕事ができます。

働きながら介護福祉士を目指す際の勉強方法

介護現場で使う知識を問われる問題も多いため、実務経験があれば、勉強不要で解ける問題も少なくありません。ただ、法律や制度関連の問題もあるため、勉強し、暗記が必要な分野もあります。受験のためのスクールも働きながら通える日程が多くあるため、1人で勉強するのが不安な場合は、国家試験突破のための講座を利用するのもよいでしょう。

しかしながら、介護福祉士の国家試験の難易度はそれほど高くなく、独学でも十分合格を目指せる程度です。高校受験・大学受験など学生時代に勉強を頑張った経験がある方であれば、独学で問題なく合格を目指せるでしょう。

実務経験ルートで介護福祉士を目指す場合の求人探しのコツ

未経験・無資格の状態から実務経験を積んで、介護福祉士を目指す場合、実務者研修という民間資格を修了することが必須です。実務者研修の受講費用は、スクールを運営する会社や地域によって異なりますが、多くの場合、10万円以上の費用が必要です。そのため、実務経験ルートで介護福祉士を目指そうとする人が求人を探す場合、実務者研修の受講費用や介護福祉士の受験料など、資格取得に係る費用を出してくれるか否かに着目して求人を探すことをおすすめします。

面接の際に資格取得支援制度の有無を確認することで、自己負担を減らせる可能性があるので、求人を探す際や面接を受ける際は、ぜひ積極的に確認してみてください。資格取得に意欲があることをアピールする機会にもなり、一石二鳥です。

介護福祉士の将来性とは?キャリアパスを把握しよう

無資格から介護福祉士を目指す場合、キャリアパスは次の通りになることが多いです。

介護職員初任者研修→介護福祉士実務者研修→介護福祉士

上記の手順を踏んで取得していけば、確実にキャリアアップできるでしょう。初任者研修は必須の資格ではありませんが、介護現場で働きたいと考える方や働き始めたばかりの方が最初に取るべき資格として、「初心者向け」と紹介されていることが多い民間資格です。

一方で実務者研修は、介護福祉士の受験資格を得るためには修了しておくことが必須の資格となります。働きながら修了を目指すことは十分可能ですし、修了に際して試験もありますが、受かるまで何度もチャレンジ可能なものとなっています。決して難易度の高い試験ではありませんので安心して臨んでください。

認定介護福祉士とは?

図解の一番上に位置する、認定介護福祉士とは、2015年12月に誕生した民間資格です。介護福祉士を取得後、5年以上の実務経験を積み、指定の研修を600時間受けることで取得できます。現在は民間資格であり、受講費用も高額になることから、積極的に取得しようとする人は少ないのが現状ですが、いずれ国家資格になるような動きがあれば、資格取得の動きは活発になっていくと予想されます。

介護福祉士からケアマネになるという選択肢

介護福祉士を取得後は、5年の実務経験を積んだのち、ケアマネージャー(以降ケアマネ)の資格を取得してキャリアチェンジするという選択肢もあります。ケアマネ業務に従事すれば、夜勤もなく、デスクワークが中心となることが多いため、体力的に現場の介護職がキツイと感じ始めた方やお子さんが小さい場合、家族の介護がある場合など、家庭の事情やライフステージの変化にあわせて取得を検討してみても良いかもしれません。

まとめ

本記事では、介護福祉士を目指す際の流れについて、様々なルートがあることを解説し、それぞれのメリットなどを中心に記載しました。さらに、介護福祉士を目指すうえでの注意点や勉強方法、介護福祉士取得後のキャリアパスなどについても分かりやすく解説しました。

介護福祉士は介護に係る資格の中で唯一の国家資格となりますが、実務経験を積むことで、学校に通わず取得を目指すこともできる資格です。また実務者研修→介護福祉士と取得していき、経験を重ねることでケアマネージャーにキャリアチェンジすることもできます。学歴や職歴がなくても手に職を付けられる数少ない職種ですので、ぜひ前向きに介護福祉士の取得を検討していただければ幸いです。

ABOUT ME
椿 るい/現役介護福祉士ライター
介護業務に従事して9年目の介護福祉士。 介護現場でのリアルを伝えるため、Webライターとしても活動中。 特養や精神科での勤務経験を活かし、事実に基づいた「生の声」をお伝えします。また、ユニットリーダーなどの役職の経験や常勤・派遣・夜勤専従派遣といった複数の働き方の経験もあるため、介護士としての働き方や給与の問題は特に経験と知識が豊富です。