我が国では総人口が減少する中で、65歳以上の高齢者人口が2020年時点で3,617万人と過去最多となり、総人口に占める割合も28.7%と過去最高になりました

2025年には介護職員が34万人不足する見込みであり、介護業界の慢性的な人手不足を解決するべく、政府は国をあげて介護人材の確保・育成及び処遇改善に努めています。

そうした中、現在介護職は今後も需要が確実視され、資格を取得することによってキャリアアップを図ることができるとして人気の転職市場となっています。しかし一方で介護職員の離職率は平成30年度時点で全産業の離職率14.6%と比較して15.4%と高く、さらにせっかく介護士として就職しても7割が3ヶ月未満で離職するという定着率の低さもまた現実問題として挙げられます。

何故このようなことが起きてしまうのでしょうか?それには実に様々な理由が存在しました。本記事ではこれから介護士を目指す方向けに介護求人の見極め方や介護職への転職に失敗しないためのコツについて取り上げていきます。

 求人情報を探す前にやるべき3つのこと

何も準備せずに手当たり次第に求人情報を探すのは無謀というもの。効率良く自分に合った求人を探すために、これからご紹介する3つの前準備を行なう必要があります。それぞれについて見ていきましょう。

介護職に就職・転職する目的と理由を明確にする

まずは介護職に就職・転職する目的と理由を明確にしましょう。

あなたは何故介護士になりたいのですか?

介護士になって叶えたい未来はなんですか?

転職する場合は、どうして前職を辞めなければならないのですか?

数ある職業の中から介護士を選んだということはそれなりの理由があるはずです。「今後需要が確実視される安定した職場だから」「手に職を付けられる仕事だから」なんでも構いません。あなたが介護士になりたい理由と介護士でなければ実現できない未来についてきちんと説明できるようにしておきましょう。

説得力のある理由を考えることができれば、面接の場においても面接官を納得させることができます。後述する「転職の軸」の土台にもなりますので是非時間をとって考えてみてください。

自己のキャリアの棚卸しをする

あなたが転職者である場合は、「キャリアの棚卸し」が必要になります。

キャリアの棚卸しとはこれまで携わってきた全ての仕事について書き出し、整理をすることです。

今まで取り組んできた業務を時系列順に書き出し、仕事を通して身につけたスキルや経験を振り返っていきます。実績や評価、モチベーショングラフなどもあると良いでしょう。

キャリアの棚卸しを行なうことで、自分の強みや得意な仕事、仕事へのこだわりが明らかになり、職務経歴書に書く際のアピールポイントや自分の適性を見つけることができます。自分の長所や短所、得意不得意が明確になれば転職先企業とのミスマッチを防ぐことにもつながりますし、これからの未来のキャリアを考える手がかりにもなります。

 就活・転職の軸を決める

一口に介護士と言っても介護施設だけで10種類以上あり、施設の種類によって仕事内容は変わります。施設で働く場合と医療機関で働く場合、さらにはホームヘルパー(訪問介護)として働く場合など、働き方も様々です。

キャリア先生
未経験から介護職を目指す場合は業界研究や介護職についてしっかり調べた上で、「転職の軸(就職の軸)」を決めた方が良いでしょう。

「就活の軸」「転職の軸」とは、あなたが仕事や就職先を選ぶときに重視する条件のことです。ここで、前述した「就職・転職する目的」が生きてきます。何故介護士に就職したいのか改めて考え、転職の目的を達成するための希望条件を整理していきます。

希望条件には収入や仕事内容、勤務地、勤務時間、就業環境など様々なものがあります。希望条件をピックアップできたら、その中から絶対に譲れないMUST条件と譲歩できるWANT条件の2つに分類し、優先順位を付けていきます。

そうすると自然と自分が何を大切にしているのか、どんなところで働きたいのかが見えてくるのではないでしょうか。このようにして転職(就活)の軸が定まってきたら、新しい職場で「叶えたいこと」や「なりたい自分」をイメージしてキャリアパスを設定してみましょう。1年後や5年後、10年後にどうありたいのかキャリアビジョンを明確にするため、最終的なキャリアの目標と途中段階でのアクションプランを書き出してみましょう。今まで漠然としていたキャリアパスを具体的にイメージすることで、求人を絞りやすくなります。

 介護職の求人情報はどうやって探す?

世の中には求人情報が多く溢れているので、どうやって探したら良いか分からなくなることもありますよね。ここでは介護職での求人情報の主な探し方について、5つの方法をご紹介します。

ハローワーク

ハローワークは正式名称を「公共職業安定所」といい、厚生労働省が職業安定法に基づいて設置した国の行政機関です。地域密着型で地元の求人情報に強いのが特徴なので、家の近くで働きたいと考えている方にはおすすめです。

無料で転職相談が受けられるだけでなく、面接対策や履歴書の添削まで無料で受けることができます。さらに条件を満たす対象者であれば介護職員初任者研修を無料で受講することができるので、転職活動にお金をかけられない方や自分のペースで転職活動を進めたい方はハローワークを利用してみましょう。

ハローワークは企業と求職者の両方に公平性を保った転職支援を行っているというメリットがある一方で、実際に求人を紹介してもらうにはハローワークに通い続けなければならなかったり、応募には紹介状が必要であったりなど、ハローワーク独特のルールがあるので注意が必要です。また、民間の転職エージェントに比べてマッチングが不十分であったり、求人情報の情報量が少ないなどのデメリットもあります。

求人情報誌

新聞の折り込み広告や駅やコンビニに置いてある求人情報誌は、ハローワークと同じく地域密着型で、周辺エリアに限定した求人情報が掲載されています。自宅近辺で働きたい方におすすめの方法と言えるでしょう。

フリーペーパーなので無料で持ち帰ることができるのも嬉しいポイントですね。しかし、広告スペースに限りがあるので情報量がどうしても少なくなる傾向にあります。また、募集人数(採用枠)も少ない可能性があるので競争率が高くなりやすいのが特徴です。

転職サイト

インターネット環境さえあれば、最も手軽に検索できるのが転職サイトです。豊富な求人情報の中から、様々な条件で検索をすることができるので、自分でじっくり選びたい方におすすめの方法です。

求人情報は日々更新されるので、こまめにチェックすることで最新の情報を入手することができます。しかし、その情報量の多さ故に、しっかり絞り込みを行わないと希望の求人を見つけられないこともあります。また、情報収集や面接の日程調整などは全て自力で行わなければならないため、転職活動の自由度が高い反面、手間が増えるのも事実です。転職の軸をしっかり決めてから取りかからないと、思うような検索結果が得られないこともあります。

転職エージェント

転職や就職活動に自信がない方には転職エージェントがおすすめです。介護職は専門職なので、介護業界に特化した転職エージェントを利用するようにしましょう。

転職エージェントでは専門のキャリアアドバイザーが求職者の希望や経験を鑑みて求人をピックアップしてくれるので、一から自分で求人情報を探す必要がありません。一般の転職サイトには掲載されていないような非公開求人も多数ありますので、自分の希望に合った求人にたどり着く可能性も高まります。

応募書類の添削や面接対策を無料で行なってくれるほか、スケジュール管理から給与などの条件交渉まで代行してくれるので、一人ではないという安心感を得ることができます。さらに、事前に職場見学の機会を設けているところがほとんどなので、実際に自分の目で職場の雰囲気や施設を確認できる点も大きなメリットでしょう。

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介護職専門の転職エージェントはその組織力から、実際に紹介する施設や病院に足を運び取材を行なっているため、給料の実情や残業の有無、人間関係や働いている人たちの人柄まで把握していることが多く、入職前でも職場の実態を知ることができます。

知人の紹介

知人からの紹介であれば採用前提で面接してもらえることが多く、内定までの流れがスムーズに進む可能性が高くなります。職場について採用担当者とは話しづらいことも知人となら本音で話すことができ、職場について十分納得した上で応募できる点もメリットです。

しかし、いわゆる「コネ入社」は入社後にミスマッチが起こる可能性が高く、また嫌なことがあっても知人からの紹介ということで簡単には辞めづらいというデメリットもあります。また、自分が就職したい・転職したい時期で話がこなければそもそも成立しないことなので、タイミングが合わなければ難しい方法であるとも言えます。

介護職員の離職理由と失敗を防ぐ方法

介護労働安定センターの令和元年度のデータによると、介護職の離職理由は「自分の将来の見込みが立たなかったため」が1位で男性29.0%、女性13.1%、2位が「職場の人間関係に問題があったため」で男性25.2%、女性22.6%、3位が「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため」で男性24.3%、女性15.6%という結果になりました。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

離職理由第1位「自分の将来の見込みが立たなかったため」

男性の割合が女性に比べて大きく上回っていることから、日本の介護業界ではまだまだ女性が主体で、男性のキャリアパス制度の構築や処遇改善が十分でないことが分かります。

男性の場合は家族を養うための経済力が必要と考える方が多いのではないでしょうか。大きな施設の場合はともかく、小さな事業所の場合だと異動や管理職へのキャリアアップ、給料アップなどの処遇改善が難しい場合もあり、将来性に不安を感じて離職につながるケースも多いようです。

入職してから「こんなはずではなかった」と入社後ギャップに苦しむ前に、施設見学や面接の時点で自分はどんなキャリアプランを持っていて、どのようにキャリアアップしたいか、また、応募先施設のキャリアパス制度はどのようなものがあるかを十分にすり合わせしておきましょう。

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施設によっては資格の受講費用を全額補助してくれたり、資格を取得するごとに月収をアップさせたりするなどの資格取得支援制度を設けているところもあります。介護職でキャリアアップを目指したい方は上記のような研修や福利厚生の有無、人事制度などを確認しておきましょう。

離職理由第2位「職場の人間関係に問題があったため」

人間関係の悩みはどの職場にもあることですが、介護職ではそれが毎年離職理由の上位にランクインします。それは介護士という仕事の特性も関係しているようです。

介護士は特に幅広い年齢層の職員が一緒に働くことに加えて、チームワークも要求される職場です。同時に、小さな伝達ミスが入居者の命にも関わる医療現場でもあります。

度重なる緊張感や慢性的な人手不足による過労で職員がストレスを溜めやすく、先輩社員が新人にきつく当たってしまうこともあるようです。また、女性が多い職場なので男性職員が居心地の悪さを感じたり、派閥間の揉め事に巻き込まれたりすることも少なくありません。

さらに、利用者や利用者の家族と良好な人間関係を構築できないという悩みもあります。特に認知症の利用者の場合、暴言を吐いたり暴力をふるったりすることもあるので職員の精神的な負担になるようです。

キャリア先生
介護士を目指す場合は、職場の同僚・施設利用者・施設利用者の家族の3ベクトルの人間関係が存在することを認識した上で、相手を受け入れることから始めてみましょう。

同僚も利用者もその家族も皆「人」であり、万人に通用する絶対的なマニュアルなどありません。一人ひとりに向き合って丁寧に人間関係を構築してみましょう。それでも不安な場合は、会社の評判や口コミサイトなどで大まかな情報を調べておきましょう。それだけで職場の人間関係を完璧に把握することはできませんが、施設の雰囲気や職員同士の仲の良さを知るきっかけになるのではないでしょうか。

離職理由第3位「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため」

介護士を目指す人ならば、大なり小なり自分自身の「介護観」というものを持っているはずです。「利用者の痛みに寄り添い、共に歩んでいく介護を提供したい」「体に不自由を覚えても、心が満たされるような環境づくりを支援していきたい」など、介護士は利用者とその家族の人生に関わる仕事ですから、理想の介護観や仕事観というものが存在します。

キャリア先生
しかし、この介護観は人によって違うため、しばしば揉め事の対象になったり、または施設自体の運営方針や価値観に同意できずに離職してしまうケースもあるようです。

同じ介護の仕事ではあっても、法人や施設・事業所の理念や運営のあり方は施設によって異なります。介護理念は施設のホームページで事前に調べることができますし、またホームページに書いていない場合でも、転職エージェントを利用すれば転職先候補の職場の雰囲気を聞くこともできます。就職活動や転職活動をする際には施設の運営方針や介護に対する考え方をリサーチしておきましょう。ここをしっかりと調べることができていれば、入社後ギャップを感じる可能性も低くなりますし、施設の理念に賛同していれば、面接などで自己アピールの材料にもなるでしょう。

良い職場を見分けるポイント

職場を見極める一つの指標として離職率の高さが挙げられますが、施設ごとの離職率は公開されていないことも多く、求人情報だけで職場の内情を全て把握するのは難しいでしょう。ここでは入社後のミスマッチをなるべくなくすために、応募先施設が良い職場かどうかを見分ける6つのポイントについてご紹介します。

①職員数に対して採用人数が多すぎないかどうか

在籍している職員数に対してあまりにも採用人数が多い介護施設は、離職率が高い傾向にあります。

例えば50人規模の介護施設で30人の採用枠がある場合、一定数の退職者が出ることを見越して採用している場合があります。そういった職場では人間関係の揉め事が絶えなかったり、社内教育制度が整っていなかったりするなど、何かしらスタッフが定着しない理由があるかもしれません。

ただし、新規事業立ち上げや経営規模の拡大のために人材を大量募集している可能性もありますので「採用人数が多い=離職率の高い職場」とすぐに決めつけてしまうのはNGです。採用人数の多さが気になった場合には、採用コンサルタントに募集の背景などを確認してもらうと良いでしょう。

②離職率が低いかどうか

職員が働きやすい良い職場とは、人があまり辞めず離職率が低いことが特徴です。転職活動を進める際には志望する施設や事業所の離職率を確認しておきましょう。

キャリア先生
離職率を公開していない企業の場合、面接で聞くのは勇気が要りますよね。その場合は相手に聞かずに、その施設が常に求人を出しているかどうかに注目してみましょう。

常に求人を出している職場は、職員が入ってもすぐに辞めてしまい、職員が定着しないなど何らかの理由で職員が足りていない傾向にあります。中には事業拡大につき長期間にわたって求人を出している場合や、採用基準が厳しく、人材を厳選している場合もありますが、施設数の増加や事業拡大以外の理由で求人広告が頻繁に出ていたら、その職場にはスタッフが定着せず、採用活動に苦戦している場合がほとんどです。良い職場を見極める場合は求人広告の出稿の頻度にも留意しておくと良いでしょう。

③給料や待遇のバランスは良いかどうか

周辺地域の同形態の施設と比べて、給与が高すぎる場合は注意が必要です。

キャリア先生
好条件の給与や待遇は魅力的ですが、地域や施設形態、職種、経験年数など勤務条件が同じ求人と比較した場合、給与や賞与、手当てが飛び抜けて高い場合は一旦立ち止まって内容をよく確認してみましょう。

長時間の残業代込みの金額になっていたり、ほとんど昇給がなかったりする可能性もありますし、離職率の高さから給与や賞与、手当の額を高くして人を集めようとしている可能性もあります。

また、残業代や手当に関する具体的な記述がない場合も要注意です。残業時間の管理やルールが曖昧で、サービス残業が行われていたり、年間休日数などが守られていない可能性があります。求人情報は1つの媒体のみを確認するのではなく、できるだけ複数のサービスを利用して、同じ求人情報を多角的に見て判断するようにしましょう。

④スタッフの表情は明るいか

もし面接時、もしくは面接前に職場見学ができた場合は、スタッフの表情もチェックしておきましょう。

挨拶しても返事がない、スタッフ同士のコミュニケーションもなく慌ただしく走り回っているような職場は、労働時間が守られていなかったり、深刻な人手不足によりスタッフ一人ひとりの負担が大きい可能性があります。

反対に、スタッフ同士の仲が良さそうだったり、スタッフが笑顔で楽しそうに働いている施設は管理が行き届いていて、スタッフに余裕がある良い職場であると言えます。入社後、うまく馴染めそうかどうかなどをイメージしながら見学すると良いでしょう。

また、面接官の態度にも注目しておきましょう。施設や事業所の責任者が面接を担当することが多いので、責任者の態度や考え方がそのまま施設のマネジメントに反映されていると言えます。

施設の責任者は内定が貰えたら、あなたの新しい上司となる人です。責任者と意見が合わなかったり、施設の運営方針に賛同できない場合は一旦立ち止まって考えてみましょう。

⑤施設は清潔感があるか

施設に清潔感があるか、匂いが気にならないかも大切な判断基準の一つです。

「床や壁が汚れている」「掃除が行き届いていない」「汚物臭がする」「詰所が物で雑然としている」など、そうした状況を放置しているということは人手不足で気づけていない状態、もしくは見て見ぬ振りが常態化している可能性があります。

特に今のようなコロナ禍においては衛生管理が行き届いていないと感染症拡大の恐れもありますので、施設の衛生状況が気になる場合は一旦立ち止まって考えてみましょう。

そのほかにも男性入居者のひげが伸びていないか、身の回りは汚れていないかなども施設を選ぶ際の指標になります。施設が清潔で入居者全員にケアが行き届いていると、入居者は快適に過ごせるため、自然と笑顔が溢れ、施設側と入居者側双方にとってwin-winの関係を築くことができます。

⑥採用までの期間が適切かどうか

2、3点の質問だけで面接が終わり、すぐに内定を出すような施設は、離職率が高い可能性があります。

一般的に採用面接では応募者の人柄や能力、将来性などを総合的に考えて採用するかどうかを判断するため、選考にもそれなりの時間をかけるはずです。そのため履歴書に軽く目を通しただけで、いつから来られるかどうかを聞いてくる施設はよほど人材が不足していて、すぐにでもスタッフを確保したいという施設側の思惑がある場合がほとんどです。

しかし、中には施設側と応募者とのマッチ度が非常に高く、これ以上質問することがないほど納得できる面接であった場合もあります。大事なのは志望動機や退職理由、今までのスキルや経験を質問してくれたか、また、施設側から施設の運営方針や理念を説明してくれたかどうかです。

ここを押さえていると人材を十分吟味してくれた可能性が高くなります。労働条件や福利厚生に関する質問に対しても、うやむやにせず、きちんと誠意を持って答えてくれたかどうかもチェックポイントです。

介護職で転職を成功させる3つのコツ

一般的に、転職回数が多ければ多いほど、転職成功率は下がると言われています。

度重なる転職は応募者にとっても心身の疲労につながりますし、あまりにも転職回数が多いと採用側はマイナスイメージを抱く可能性があります。

勇気を出して挑戦してみた転職、せっかくなら成功させたいですよね。ここでは介護職において転職を成功させるコツについてまとめてみました。これから介護職への転職を検討されている方は是非参考にしてみてください。

事前の情報収集を徹底する

介護職に限りませんが、転職を成功させるためには何よりも情報収集が大切です。特に介護職が未経験な上に転職活動自体も初めてという方は入念な準備が必要です。

施設の規模や設備、概要、運営方針、理念、雇用条件、給与、待遇などは介護施設のホームページや求人情報などからある程度把握できます。求人票の情報を正しく理解した上で、それでもわからないことは面接で質問してみましょう。

例えば有給休暇や育児休暇などの福利厚生は、募集要項に取得できると記載されていても、実際の取得率まではわからないこともあります。面接は施設側と応募者側双方の疑問点を解消し、マッチング度合いを測る場でもありますので、今まで不透明だったところが明確になり、実際に働き始めた場合のことをイメージしやすくなります。

その他にも口コミサイトや転職エージェント経由で施設の評判を聞いておくなど使えるリソースは積極的に利用していきましょう。自分自身の熱意をアピールするために、業界研究も忘れずに。介護職は特に勤務先によって業務内容が異なりますので、介護施設の種類ごとの特徴や介護保険制度などについても勉強しておくと良いでしょう。

施設見学をさせてもらう

可能ならば面接時に施設見学を申し入れてみましょう。求人情報に掲載されている施設写真と実際に見る施設とでは全然印象が違うということは往々にして起こります。自宅から通いやすいか、食事をとるところはあるか、施設の雰囲気は明るいか、スタッフが生き生きと働いているか、施設の掃除は行き届いているかなど、自分なりのチェックシートを用意して見学に臨みましょう。

現場で働くスタッフに話を聞くことができれば尚良いですね。実際に入居者にどのような介護サービスを提供しているのか自分の目で確かめると、入社後の働いている自分をイメージしやすいでしょう。施設を案内してもらう際には教育体制や運営方針、入居者との関わりや大切にしていることについても質問してみましょう。3件以上も施設を見学すれば、それぞれの特徴も明確になり、自分に合った施設を見つけやすくなります。

採用面接官は忙しい時間を割いて施設を案内してくれています。見学の際には笑顔で挨拶を忘れずに、服装や態度などのマナーにも気をつけて臨むようにしましょう。

辞める前にできることをやってみる

介護職は特に体力的にも精神的にも負担が大きい仕事なので、転職したばかりの頃は慣れない仕事の多さも相まって大変に感じてしまうこともあるでしょう。

最初の頃は人間関係にうまく馴染めずに転職を失敗してしまったと感じる人もいるかもしれません。しかし、どの仕事においても慣れて要領やコツを掴むまでは大変に感じるものです。どういう時に大変と感じるか、どういう時に仕事でミスをしてしまうかなどメモをしておいて、業務効率化の方法を考えてみると良いかもしれません。

どうしても業務量が多くて負担が大きい場合は、仕事量を減らしてもらうよう直属の上司や施設の責任者にかけ合ってみるのも良いでしょう。同じように、苦手な人や新人いじめをしてくる人がいた場合も、すぐに直属の上司や施設の責任者に相談してみましょう。その人と時間帯をずらしてもらったり、場所を変えてもらったりするなどの対応を取ってもらえることがあります。

嫌なことがあって、すぐに退職するという決断を下す前に、まずは自分の力で改善できることから初めてみましょう。すぐに失敗したと思わずに、自分で働きやすい環境を作っていくことも大切です。

おわりに

介護職は「夜勤などがあり、きつい仕事」や「給与水準が低い仕事」というマイナスイメージが広がっているため、人材参入の阻害要因になっているとの指摘もありますが、実際には残業がないところがほとんどでプライベートの時間を確保しやすく、今後ますます需要が増えるため、安定した職場であると言えます。

また、今後必要になってくる介護人材を確保するために国は度重なる処遇改善を行っており、勤続10年以上の介護福祉士には月額平均8万円相当の処遇改善を公費1,000億円程度を投じて実施するなど、介護人材の定着を図っています。施設によっては十数万円の入社お祝い金制度を設けているところもありますので、確実に稼ぎたい方にとっては魅力的な職場なのではないでしょうか。

この他にも様々な待遇改善を行なっているところが多くありますので、介護士への就職・転職に悩んでいる方は是非しっかりと情報収集を行なって、介護に対する知識を身に付けた上で就職活動を進めてください。自己分析及びキャリアの棚卸しで見つけた自分の「転職の軸」と照らし合わせて求人情報を探すことで、きっとあなたの望むような理想の職場が見つかるはずです。