この記事のターゲット:介護サービス利用者の介護度別の心身状態を知りたい人

この記事の要約

あなたは介護保険制度における介護度について知っていますか?一口に高齢者と言っても心身の状態によって必要な介護サービスの種類は異なります。介護が必要な度合いを分かりやすくしたものが介護保険制度における「介護度」です。介護度は要介護認定によって決定され、それぞれ要支援1、要支援2、要介護1、要介護2、要介護3、要介護4、要介護5の7段階があり、数字が大きいほど多くのサポートが必要な状態と判断されます。認定された介護度によって利用できるサービスが異なるため、入所できる介護施設や貸与してもらえる福祉用具についてあらかじめしっかり確認しておくことが重要です。介護度を理解することで利用者自身の心身状態や、利用者ご家族の負担を推し量ることができます。ご本人やその周りの方達にどのようなサポートができるのかの判断材料にもなりますので、介護認定制度の理解を深めておくことが大切です。

要介護者が受けられる介護サービスは、介護度によって異なります。そのため利用者様が希望する介護サービスがあるのに、介護度が満たされておらず受けることができなかったり、介護サービスを活用しきっていなかったり、といった問題は少なくありません。

適切な介護を提供するためには、利用者の方と家族だけでなく介護士も介護保険制度について知っておくことが大切です。

この記事では、介護サービスの基本ともいえる介護保険制度と介護度の内容について、解説します。

介護保険における要介護認定制度とは?

高齢になり体が思うように動かなくなったり、病気になってしまい1人で生活をするのが困難になったりした場合、誰かのサポートが必要になります。そして、サポートをしてもらうのには費用が必要です。

とはいえ全額を自分だけでまかなうのは、金銭的な負担が大きいと言えます。

そこで活用できるのが、介護保険です。介護保険を使うことで、介護にかかる費用負担を1〜3割に抑えられます。

介護保険を適用してもらうには、「要介護認定」を受けなくてはなりません。要介護認定とは、専門家やコンピューターの審査を通して、対象者にどの程度の介護やサポートが必要なのかを判断するものです。

判断された内容をもとに、要支援・要介護度のランクが決まり、ランクに応じて使用できるサービス・金銭負担の上限額なども決定されます。

ランクは、要支援の場合は1〜2、要介護の場合は1〜5の段階で分かれています。数字が大きいほど多くのサポートが必要と判断された状態です。

要支援と要介護の違い

要介護認定とは、介護サービスの必要度合いを判断するものであり、大きく分けて「要支援」と「要介護」の2種類があります。

要支援は、日常の基本動作はほぼ自分で行えること、部分的な介護のみが必要といった場合に認定されます。比較的、要介護よりも必要なサポートの度合いが軽度で、利用できるサービスも「介護予防サービス」に基づくものです。

要介護は、要支援に比べて日常の基本動作を行うのが難しいケースや、思考力・理解力といった身体能力以外にも衰えが見られる場合に認定されます。要介護状態では、「介護サービス」が利用でき、要支援よりも幅広いサポートが受けられるのが特徴です。

つまり、要支援は要介護の前段階と言えます。放っておけば要介護になってしまうため、そうならないように予防をするのが要支援です。要介護はすでに一定以上の介護が必要な状態であり、要支援よりも症状が重くなったもの、と考えるとわかりやすいでしょう。

要介護認定はどのように行われる?

要介護認定を受けるには、まず、お住まいの役所にある「介護保険担当窓口」で申請をします。

その後、日程を決めたら地域の認定調査員が家を訪れ、利用者様の状態を確認します。確認した内容と医師の診断やコンピューターの判断を交えて、保険・福祉・医療の専門家たちが話し合いを行います。

話し合いの結果、要介護認定の有無とその度合いが判断されます。認定が判断されるまではおよそ30日かかるため、申請をする場合は早めに行動をしたほうが良いでしょう。

介護度別の判定基準と心身状態

介護度には、段階的なレベルがあります。レベルによって受けられるサービス、負担額などが異なります。

ここでは介護度別の判定基準と、心身の状態について解説します。

要支援1

要支援1は、1人で生活が行える状態です。ただし立ち上がったときにふらつく、掃除や家事などの一部の日常動作には見守りが必要といったふうに、部分的な介護を要する利用者様に認定されます。

とは言え、トイレやお風呂など日常の生活には支障がありません。今後は要介護状態になる可能性がゼロではないため、予防を目的としたサービスが提供されます。

要支援2

要支援2は要支援1同様に、日常生活にはほとんど支障がない状態です。しかし要支援1よりも足腰が弱っていたり、より多くのサポートが必要と判断された際に、認定されます。

具体的には、お風呂やトイレは基本的には問題ないものの、一部の動作にはサポートが必要、といった場合に要支援2と認定されるケースが多くなります。さらに歩くときには杖が必要であったり、立ち上がるときに支えが必要になるときがあったりする場合も要支援2と判断されやすくなります。

要介護1

要介護1は、要支援2との境界線の判断が難しい段階です。日常生活自立度は要支援2と大きく変わりません。しかし要支援2よりも認知症の度合いが高いことや、状態が今よりも悪くなる可能性がある、といった場合には要支援2ではなく要介護1と判断されます。

要介護1になると利用できるサービスが「介護予防サービス」ではなく、「介護サービス」に切り替わるのが特徴です。要支援では利用できなかった「夜間対応型訪問介護」や「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」なども、要介護1から受けられます。

要介護2

要介護2は、トイレやお風呂などを自立して行うのが難しく、より多くの手助けを要する状態です。さらに立ち上がるのにも支えが必要となり、要介護1よりも身体能力・思考力が低下しています。

食事の見守りも必要になるため、家族だけでサポートをすることが困難になる段階と言えるでしょう。

要介護3

要介護3は、生活全般において介助が必要な状態です。トイレやお風呂に加えて、服の着替えといった身の回りのことも1人で行うのが難しくなります。

理解力の低下も著しくなり、24時間のサポートが必要となってくるでしょう。そのため要介護3は介護の負担も大きく、施設によっては要介護3以上しか受け付けない、といったケースもあります。

このように要介護3は、介護認定において1つの節目といえる段階です。

要介護4

要介護4は症状も重く、介護の負担が大きい状態と言えます。自力では歩く・立ち上がるができないだけでなく、座っていることもままらない状態で、日常生活のほとんどにサポートが必要です。

理解力の低下も見られ、問題行動が頻繁に起こるケースもあります。寝たきりの状態で過ごす利用者様も、少なくありません。

要介護5

要介護5は、もっとも症状が重い状態です。1日の大半を寝た状態で過ごし、起き上がることもほとんどできません。排泄にはオムツを使用するケースが多くなります。

状態によっては口から食べ物を摂取するのも難しく、介護に大幅な時間と負担がかかると言える段階です。

認定された介護度によって受けられるサービスは変わる

介護保険制度では、認定された介護度によって利用できるサービスが異なります。

要介護は要支援に比べて受けられるサービスが多く、「特別養護老人ホーム」「介護老人保健施設」などは要介護でないと入所ができません。加えて特別養護老人ホームは、原則、要介護3以上のみが入所を許可されています。

また、福祉用具貸与の内容も介護度によって異なります。介護やリハビリに通える回数も、介護度によってさまざまです。

ご自身やご家族が要介護認定を受けた場合、どのサービスをどの程度活用できるのか、あらかじめしっかり確認をしておきましょう。

介護職の人は、介護度からどのようなサポートを行えば良いのか、適切な介護内容を把握することが大切です。

利用者の心身状態に合わせた介護ができるよう要介護認定制度への理解を深めよう

介護度によって、利用者様の心身の状態は変化します。また、ご家族の負担も介護度によって変わると言えるでしょう。

ご本人やその周りの方達にどのようなサポートができるのか、介護認定制度の理解を深めておくことが大切です。やや難しい内容のようにも思えますが、紐を解いてみれば理解は困難ではありません。

要介護認定への理解を深め、適切な介護が行えるように努めましょう。